指 朗読:大島昭彦 再生時間:5分39秒 無料再生時間: 提供:パンローリング |
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内容紹介
患者は手術の麻酔から醒めて私の顔を見た。親友である患者は名のあるピアニストであり、暴漢に右手を斬りつけられた彼の命を救うために、私は彼の右手首を切断するしかなかったのだ。
ピアニストとしての命を失ってしまった彼を憐れんで、私は看護婦にも今しばらく手首が失くなったことを知らせないように、固く言いつけた。
二時間ほどしてやや元気を取り戻した患者は、新しい作曲をしたので、右手の指を動かしていいかと尋ねる。私はハッとしたが、とっさに彼の上膊の尺骨神経の箇所を指で押さえた。それによって指があるような感覚を脳に伝えられるのだ。
「ああ、右の指は大丈夫だね。よく動くよ」
だが、私が病室を出た時、一人の看護婦が手術室の棚を見つめて顔面蒼白になっていた。彼女が見たものとは……