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支那米の袋

支那米の袋

著者:夢野久作

再生時間:1時間38分26秒

提供:パンローリング

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内容紹介

『私はもう近いうちに日本と戦争をして戦死をするのです。ですからもう、貴女以外の女の人と結婚する事は出来ないのです。貴女と一緒に天国に行くよりほかに楽しみは無くなったのです。ですから満足して、私の云う事をきいて頂戴。温柔おとなしく私の云う通りになって死んで頂戴。ね……わかったでしょう。』

ウラジオストクの踊り子ワーニャと若きアメリカ人士官ヤングは互いを傷つけあうような夜の営みを持つ関係になっていた二人は、近々出帆のため別れを余儀なくされることになる。別れたくないワーニャにヤングが持ちかけたアイディアは、支那米の袋に入って軍艦に忍び込みアメリカへ亡命するというものだった。お互いを傷つけることで愛を確かめる行為の最終的な形を、ワーニャに教え込んだヤングが出帆の夜に"持ち込んだ"軍艦の底には、似たような米袋が数多く運び込まれているだった。

洗脳されたワーニャの行く末は如何に。想いを遂げる方法は一つ。鋭く冷たく光ったナイフによってなされるのか・・・。

内容項目

一:ウラジオトクのとあるレストラン。美貌でお喋りの女が日本兵に語りかける。

「くだを巻くわよ今夜は…。わたしはこの間から何度も何度もあんたを殺したくなった事があるんですもの・・・」
彼女は語りだす。
本当に美しい、一生に一度しかできない最高の愛の形を分かち合おうとした若きアメリカ人仕官ヤングとの恋の話を…。

二:十月の末。ヤングがしょげた顔つきで酒を煽り、ワーニャに向かって 別れ話を切り出す。理由は日本との戦争に向かうためであった。それを拒んだワーニャにとある案を切り出してきた。

「一つ思い切った事をやっつけてくれませんか。私が今から海岸の倉庫へ行って大きな麻の袋を取って来ますから、その中へ入ってくれませんか。毛布を身体に巻きつけておけば、人間だか荷物だかわからないし、寒くもないだろうと思いますから、そうして私の荷物に化けて軍艦に来て物置の中に転がっていてくれませんか。そうすれば、そのうちに私がうまく父親の司令官に話して、貴女を士官候補生の姿にして、私の化粧室に住まわせて上げますから」

三:首尾良く軍艦に運び込まれたワーニャが船底の部屋で耳にしたこととは

「ワン。ツー。スリー。フォーア…サアテン。フォテン…おやア…一つ足りねえぞこりゃア…フォテン。フィフテン。シックステン…と…あっ。足下あしもとに在ありやがった。締めて十七か…ヤレヤレ」

四:その時にやっとわかりかけて来たんですもの…。妾のまわりにはまだ、いくつもいくつも支那米の袋が転がっているらしいことが…。

「袋の中の別嬪べっぴんさんたち。よく耳の垢あかをほじくって聞いておくんなハイよ。いいかね。お前さん達はみんな情人いいひとと一緒になりたさに、こんな姿に化けてここへ担かつぎ込まれて来たんだろう。又、お前さん達のいいひとも、おんなじ料簡で、お前さん達をここまで連れて来たんで、決して悪気じゃなかったんだろうが、残念な事には、それが出来なくなっちゃったんだ。」

五:船員に捕まるまいと袋に詰められたまま暴れたワーニャは、きつく針金で縛られ気絶してしまった。気が付くと件のヤングが歩み寄ってくる。

「ワーニャさん。おとなしくしていて頂戴。いつぞやお話して上げた恋愛ごっこの事を、まだ憶えていらっしゃるでしょう。私はもう近いうちに日本と戦争をして戦死をするのです。ですからもう、貴女以外の女の人と結婚する事は出来ないのです。貴女と一緒に天国に行くよりほかに楽しみは無くなったのです。ですから満足して、私の云う事をきいて頂戴。おとなしく私の云う通りになって死んで頂戴。」

六:気絶したワーニャが眼を覚ますと、そこは薄暗い地下室。湯タンポとボロ布で包まれ素っ裸で放り出されていたのだった。
好いた男と亡命しようとした顛末を一部始終語って聞かせたワーニャが、最後に酔いつぶれた日本兵にこうささやき掛ける。

「ヤングが教えてくれた世界一の贅沢な…一生に一度っきりの…。わたし今やっと思い出したわ。日本の言葉で、こんな遊びの事を…。」


編集者からひと言

倒錯した愛の姿を逆手に取った、ヤングの愛の火消しの方法に戦慄が走る。 とあるレストランで回想されるワーニャの独り語りの中で、その話に聴き入る日本人将校との行く末が最後の最後で転じる様は圧巻。 SF作家、探偵小説家、幻想文学作家として人気を博した夢野久作の世界観をラジオドラマ風に再現しました。


著者、朗読者情報

夢野久作(ゆめの・きゅうさく)

日本の小説家、SF作家、探偵小説家、幻想文学作家。1889年(明治22年)1月4日 - 1936年(昭和11年)3月11日。他の筆名に海若藍平、香倶土三鳥など。現在では、夢久、夢Qなどと呼ばれることもある。福岡県福岡市出身。日本探偵小説三大奇書の一つに数えられる畢生の奇書『ドグラ・マグラ』をはじめ、怪奇色と幻想性の色濃い作風で名高い。またホラー的な作品もある。


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