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天皇制の政治的構造(1)

天皇制の政治的構造(1)

講演者:藤田省三

1973年4月20日 岩波市民講座 岩波ホールにて収録

再生時間:1時間49分25秒

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提供:岩波書店

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内容紹介

天皇制はなぜ今日まで存続してきたのか。天皇制の存在様式を「極限的ネガティヴィズム」と喝破し、その在り方を、現代から江戸時代へと遡って分析する。

 日本国憲法において、天皇は「国民統合の象徴」とされるが、象徴としての役割は明記されていない。また、人々の関心は公害等の身近な大問題に向かい、天皇制が問われることはない。一方明治時代、伊藤博文らは、憲法政治を導入するにあたり、西欧における宗教の代用品として天皇を用い、非政治的存在として位置づけた。そして幕藩体制下、徳川家は権力の「不足分」を補うため、名誉の源泉として朝廷を利用し、臣従の原理による支配を行う。権力集中を進めた幕府は、元禄〜享保の頃には強大な権力を確立し、天皇を廃して根本的に統治システムを改革する契機も存在した。しかし幕府はそのチャンスを生かすことなく、名誉の源泉として朝廷を利用し続け、結局、大政奉還、明治維新に至る。

 このように、天皇制をいわば「否定形」で存続させてきた日本の政治的構造を縦横に論じる。

講演者紹介

藤田省三

1927年愛媛県生まれ。思想史家。1953年東京大学法学部政治学科卒業後、1993年まで法政大学法学部で教鞭を執る(1971〜1980年離職)。『天皇制国家の支配原理』(未来社、1966年)をはじめとする天皇制国家分析で知られる。ほかに、『維新の精神』(みすず書房、1967年)、『転向の思想史的研究――その一側面』(岩波書店、1975年)、『精神史的考察――いくつかの断面に即して』(平凡社、1982年)、『全体主義の時代経験』(みすず書房、1995年)、『戦後精神の経験』(全2巻、影書房、1996年)など。『藤田省三著作集』(全10巻、みすず書房、1997-98年)がある。2003年没。

注釈

美濃部達吉(みのべ たつきち)

1873年生まれ。憲法学者、貴族院議員。1912年天皇機関説を唱え、天皇主権説の上杉慎吉と論争するが、美濃部が学界の支持を得る。しかし1935年国体明徴論が起こり、国会で天皇機関説が国体に反すると糾弾され、議員を辞職。著書も発禁となる(天皇機関説事件)。1948年没。

PCB

ポリ塩化ビフェニル。耐熱性や電気絶縁性にすぐれ、絶縁油、熱媒体、可塑剤、潤滑油等に幅広く用いられた。しかし、生体に強い毒性を持つため、日本ではカネミ油症事件(1968年)をきっかけに、1973年、製造・使用が禁止された。

『太平記』(たいへいき)

南北朝の動乱を描いた歴史文学。40巻。南北朝期に書き継がれ、室町時代初期成立。当初の後醍醐天皇の一代記が足利政権下で改訂・増補され、武家政権確立史としての性格を強めていった。後世の歴史認識に多大な影響を与えた。

『愚管抄』(ぐかんしょう)

鎌倉前期、慈円(じえん)(1155〜1225)が著した史書。7巻。保元の乱〜鎌倉前期に詳しい。慈円は摂政藤原忠通の子で、若くして比叡山入山。同母兄九条兼実の庇護のもとで天台座主。後鳥羽上皇の護持僧を務めた。

天皇の人間宣言

天皇の神格性を否定する宣言。1946年1月1日、「新日本建設に関する詔書」により発せられた。

終戦の詔勅

1945年8月15日、アジア・太平洋戦争の終結を伝える天皇の文書。いわゆる「玉音放送」で昭和天皇が読み上げた。

開戦の詔勅

1941年12月8日、対英米開戦を宣言した天皇の文書。

マックス・ウェーバー

1864年生まれ。ドイツの社会学者。『支配の社会学』において、本講演で言及される、支配の三類型――カリスマ的支配、伝統的支配、合法的支配を打ち出した。主著『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』。1920年没。

モンテスキュー

1689年生まれ。フランスの政治思想家・法学者。立法・行政・司法の三権分立を提唱。主著『法の精神』。1755年没。

伊藤博文(いとう ひろぶみ)

1841年生まれ。長州藩出身の政治家。憲法制定の中心となり、初代内閣総理大臣。日露戦争後、初代韓国統監。1909年、ハルビン駅頭で朝鮮独立運動家の安重根(アンジュングン)に暗殺された。

木戸孝允(きど たかよし)

1833年生まれ。長州藩出身。初め、桂小五郎、のち改名。幕末・明治前期の指導的政治家。1877年没。

大久保利通(おおくぼ としみち)

1830年生まれ。薩摩藩下級士族出身の政治家。西郷隆らとともに王政復古を画策し実現。明治新政府の中核を担うが、西南戦争鎮圧後、1878年暗殺された。

武家諸法度(ぶけしょはっと)

江戸時代、幕府の歴代将軍が治世の初めに大名に対して出した最重要法令。1615年、2代将軍徳川秀忠に始まる。

禁中並公家諸法度(きんちゅうならびにくげしょはっと)

1615年、幕府が天皇と公家に対して公布した17条の法令。天皇は学問を第一とし、和歌、有職故実の習学を行う、とするなど、朝廷の機能を限定した。

井伊直弼(いい なおすけ)

1815年生まれ。幕末の大老。彦根藩主。1858年、安政の大獄で水戸藩主徳川斉昭らを弾圧。1860年、江戸城桜田門外で水戸浪士らに暗殺された(桜田門外の変)。

荻生徂徠(おぎゅう そらい)

1666年生まれ。江戸中期の儒学者。朱子学を学び、のち古文辞学を唱道。1728年没。

新井白石(あらい はくせき)

1657年生まれ。江戸中期の儒学者・政治家。6代将軍家宣、7代将軍家継の下で幕政を主導。1725年没。

福地桜痴(ふくち おうち)

1841年生まれ。明治期のジャーナリスト。名は源一郎。1859年、幕府に出仕し、遣米・遣欧使節に通訳として参加。維新後、大蔵省に務め、岩倉使節団に随行。のち東京日日新聞に入り、社長兼主筆。1906年没。

鳥羽・伏見の戦(とばふしみのたたかい)

王政復古直後の1868年1月3日に起こった、新政府軍と旧幕府軍との戦闘。旧幕府軍が敗れ、戊辰戦争の発端となった。

水戸学(みとがく)

江戸時代、水戸藩で興隆した学派。『大日本史』編纂を通じて形成された。尊王攘夷運動に影響を及ぼす。

シリーズ一覧

・天皇制の政治的構造(1)
天皇制の政治的構造(2)

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